沖縄、中古ピアノ、ピアノハウス

ピアノの話PIANO STORY

1.ピアノの歴史




一般的に「楽器の王様」と言われるピアノは、1709年にイタリアのクリストフォリによって発明された弦楽器、打楽器、そして鍵盤楽器の要素を備えたものです。

元来、17、8世紀ごろはチェンバロやクラヴィコードといった楽器が使用されていました。これらは鍵盤を押すことによって爪が弦をはじく仕組みになっているものでしたが、ピアノのように7オクターブもの音域を持たず、また音の大きさも小さいものでした。クリストフォリは、ハンマーが弦をたたくという構造(こうぞう)のアクションを使って新しい楽器を発明しました。この楽器は「強弱をつけられるチェンバロ」と名づけられ、音楽の世界で弱く演奏することをピアノといい、強く演奏することをフォルテということから「ピアノフォルテ」と呼ばれるようになりました。よくコンサートでピアニストの名前の横についている「Pf」とはこのピアノフォルテを省略したものです。
はじめ作られたピアノは横型で、現在のグランドピアノに似た形をしていました。大きさは今よりも小さく、現在のピアノが7オクターブに及ぶ88の鍵盤を持つのに比べて、わずか5オクターブの61鍵程度でした。様々な作曲家や音楽家の要望により、ピアノは改良が進められて現在の大きさにまで発展しています。しかし、ピアノはとても大きく高価な楽器なので、クリストフォリの発明から約90年後1800年頃にスクウェアピアノという縦型、つまり今のアップライトピアノが完成しました。これにより、一般の家庭にもピアノが広く普及(ふきゅう)していきます。

ピアノの音は、ピアノが大きいほど響(ひび)きも良くなります。よりよく音を響かせたいというピアノ職人の希望とは反対に、ピアノの置き場所や運ぶときの手間などから、その大きさには限界がありました。そこで音の響きをよりよくするために、いろいろな工夫が施(ほどこ)されました。現在のグランドピアノを見ると、ピアノの弦は交叉している「二重交叉弦」という方式を使っていますが、昔のピアノはすべて平行に張られていたのです。また、響板(きょうばん)というピアノの心臓部をはじめ、鋼(はがね)で作るフレームや細かい部品にいたるまで科学的な研究や実験が繰り返され、大きく進化してきました。既(すで)に「完成された楽器」と言われることもあるピアノですが、より良い響きを持たせるために今日も改良が進められています。


2.ピアノはなぜ音が出る?




鍵盤を押せばピアノは音が出る、というのはごく当たり前のことですが、ではなぜ鍵盤を押すと音が出るのでしょうか?アップライトピアノを例に考えてみましょう。

ピアノの鍵盤は内部のアクションとつながっていて、押すとその動きをアクションに伝えます。アクションが動き出すと、このときダンパーという、弦の振動を止めるフェルトが弦から離れ、ハンマーがピアノの弦をたたきます。これで弦が振動するのですが、これだけではピアノらしい音にはなりません。ピアノの心臓部といわれる響板(きょうばん)は、弦の振動から発生する音を増幅させるもので、駒という部分を伝わってその振動を木目にそって響板全体に伝えます。

鍵盤を放すと、アクション全体が元の位置に戻ります。同じくダンパーは弦を抑えて振動を止め、また音を止めます。

ピアノには白52、黒36のあわせて88の鍵盤がありますが、アクションは88鍵1つ1つのつくりが皆同じです。違うのはハンマーとダンパーの形や大きさです。弦の太さ、長さもそれぞれで、最も低い音域(おんいき)では1鍵につき1本、次に低い音域で2本、そして中央部から最高音までは各3本の弦が1つの音を構成し、その合計はピアノにもよりますが約230本になります。1本の弦は約90キログラムの力で引っ張られていて、合計すると約20トン。そのため、その力に耐える強力な材料が必要とされ、鋼のフレーム(鉄骨ともいいます)はピアノに欠かせないものとなっています。また、フレームに鋼を使われることから中国ではピアノを鋼琴と呼びます。


3.ピアノに最適な環境を


ピアノは環境に大きく左右される楽器です。材料には大きく分けて木材、金属そしてフェルトなどの繊維が使われていますが、ちょっとだけ気をつけるだけで、ピアノを長持ちさせることが出来るので、ぜひ実践してみてください。

●湿気による不具合
ピアノにとって水は大敵です。間違ってピアノの上から水をこぼして弦にかけてしまったら、ほぼ間違いなくその弦は錆びて切れてしまうでしょう。水分に限らず、空気中の水分、つまり湿気もピアノにいくつかの影響を及ぼします。およそ60%程度の湿度が最適といわれていますが、これが上がりすぎてしまうと専門化のいう「スティック」という動作不良を起こします。

アップライトピアノのアクションの動きを見ると、鍵盤を押してからハンマーが弦を打つまでに様々な部品が動きますが、そのほとんどが回転軸を利用した動きです。回転軸となる部分はフレンジと呼ばれ、真鍮で出来たピンが中心となっています。ピンの周りにはフェルトが巻かれ、雑音防止の役を担っていますが、このフェルトが湿気を吸いすぎると、ピンを締め付けて動きを鈍らせてしまいます。このスティックによって起こる主な症状は、

●押した鍵盤が戻ってこない
1つの鍵盤を連打しても音が小さい、また連打できなくなる
などです。こうなると、アクションのひとつひとつを分解して修理しなくてはなりません。とても細かい部品ですので、手間がかかる作業です。
木工部品以外でも、ピアノの弦や弦を支えるピンなどの金属の多くには、防錆加工がされていないものがあるので、多湿な場所に放置しておくと簡単に錆びてしまいます。特に弦は手で触っただけで変色したり錆びたりするのでとても繊細な部品なのです。ひどく錆びた弦や、弦の振動を受けて音を出す響板は、湿気によって音にも影響をきたすので、出来る限り湿気から守ってあげましょう。

【対策】
上記のような問題を防ぐために普段から湿気対策ができます。ピアノを湿気から守るには、除湿機やピアノ用の乾燥棒などがあります。ともにセンサーがついていて、理想的な湿度を保ってくれますが、これらはそれなりの費用がかかります。手軽に入手できるものとしては除湿剤があげられます。押入れや洋服タンスに入れるものです。そして、出来ればピアノのそばに湿度計を置いてピアノの周りの湿度がわかるようにしておくと良いでしょう。湿気が高いからといって、ピアノを窓際に置くのはまちがいです。ガラスには空気中の水分が付着しやすく湿気の原因となり、また西日が当たる窓のそばではピアノの塗装面の日焼けやひび割れの原因になってしまいます。

●過乾燥による不具合
およそ60%程度の湿度が最適と記しましたが、逆に湿度が下がりすぎるとピアノはどうなるのでしょうか。

まず、鍵盤の動きを伝える軸の部分は乾燥によりフェルトの締め付けが弱くなり、フレンジがグラグラして、鍵盤の動きを十分にハンマーまで伝えることが出来ません。また余分な雑音の原因にもなり、演奏していても不愉快な気分になってしまうでしょう。ピンのほかにピアノにはたくさんのネジが使われていますが、これらは過乾燥により緩んできてしまう可能性があります。 木材で出来た部分はあまり乾燥がひどいとひび割れしてしまう恐れがあります。接着部分などは、はがれやすくなることもあります。特に響板はピアノの心臓部ともいえる重要な場所なので、この損傷はピアノにとって致命的となるでしょう。

【対策】
乾燥しすぎている場合、ある程度の湿気を部屋に作ればよいでしょう。機械を使うのなら加湿器が上げられます。逆に冬場はストーブなどの暖房器具の使い方には十分注意してください。身近な方法では、水の入ったコップを部屋の中に置くだけでも多少の効果は得られます。また、植物などを置いて適度に水を上げるとインテリアとしても使えるので一石二鳥ですね。いずれにしても湿度を上げすぎないように気をつけましょう。


4.こんなに大切!調律のお話


弦楽器であるピアノには1台に約230本ほどの弦が張られていますが、それぞれには約90キログラムの張力がかかっていて、これは1本の弦に90キログラムのおもりが下げられているのと同じ状態になっています。合計では約20トンの力となりますから、いくら鋼鉄のフレームや支柱で支えても弦は伸びていきます。これはピアノの使用頻度に関係なく、ただ置いているだけの場合でも同様です。

したがってピアノにとって調律は欠かすことのできないメンテナンスであり、調律をしないで放っておくとピアノはその品質を失っていってしまいます。

●調律って何?
調律による効果に触れる前に、調律とはいったいどういう作業なのか簡単に説明しておきましょう。

よく、調律師になるためには絶対音感、つまり鍵盤を見なくても音階をあてることが出来る能力が必要になるという人がいますが、専門的な耳の訓練の方法はあるにせよ絶対音感とは特に必要なものではありません。今日、一般的に音階の基準はA=440Hz、つまりピアノの鍵盤の上で真ん中にある「ド」の上にある「ラ」が1秒間に440回振動することを基準としていますが、絶対音感があれば調律できるとしたら、耳で聴くだけでこの振動の回数を数えられることになってしまいます。そこで調律に使われる道具に音叉(おんさ)が登場します。U字などと呼ぶこともあります。この音叉をたたいて出る音とラの音をあわせることから調律が始まります。

このラはピアノの1番低い音から数えて49番目にあることからA49と呼ばれますが、便宜上実際にはその1オクターブ下のA37を音叉に合わせ、次にこのA37のラを基準にF33からF45(ファ~ファ)の1オクターブを作っていきます。この1オクターブは普通平均率音階として調律され、1722年に初めてこの平均率を音楽に採用したのが音楽の父または「G線上のアリア」などで有名なヨハン・セバスチャン・バッハです。

さて、F33からF45の基準が出来たら次は1オクターブ下の音を聴きながら低音を合わせていきます。E44とE32(ミ)、Eb43とEb31(ミのフラット)といった具合です。最低音域では1つの鍵盤に対して1本の弦ですが、その手前は2本の弦で1つの音を出しているので、1本の弦を振動しないように止めてオクターブを合わせます。オクターブを合わせると2本の弦の音が狂うので、もう一本を合わせます。これをユニゾン調律といいます。

1番低い音まで合わせたら、また平均率音階であわせた1オクターブに戻って今度は上へ上っていきます。F#34とF#46(ファのシャープ)から最後はC76とC88(ド)までです。同じようにオクターブを合わせてからユニゾンを合わせる、という手順になりますが、中音域から一番上のドまでは1つの鍵盤につき弦は3本となるので、こちらの方が少し時間がかかります。最後はF33からF45までの1オクターブのユニゾンを合わせて完了となりますが、最初からここまでの作業には約1時間程度要します。

●調律による効果
大きな張力によって伸びた弦は持つべき音程を狂わせてしまっているので、それぞれの弦を引っ張ることによって正しい音程に合わせる、というのが調律の作業です。それではこの調律はいったいどんな効果をもたらすのでしょう。

第一に調律はピアノの品質を保持します。先に記した弦の張力はただ無謀に強いものではなく、実はピアノの音をよりよくするために計算されたものなのです。ピアノの音の心臓部に響板という比較的柔らかい素材でできた板がありますが、弦の振動をより大きく増幅させて外部に伝播(でんぱ)させるためには素材だけでなく、板の反り(そり)が重要になってきます。響板はアップライトピアノなら後方から、グランドピアノなら下から見ることが出来ますが、平らに見えるようでこの板は反りがつけられています。弦の張力はこの反りを維持するためのものでもあるのです。

長らく調律されずに放置されたピアノの弦は伸びて、音も大きくずれてしまいます。このとき、ピアノの内部では伸びた弦がピアノの状態を維持することが出来ずにフレームも伸びてしまい、ある一定の反りをつけた響板もこの張りを失ってしまいます。きれいに反っていることで弦の振動を増幅させ、音として外部に伝える響板ですが、この反りがなくなってしまうと、ピアノの音の良さまでもがなくなってしまいます。専門的にはこれをクラウン現象と呼びますが、調律することによって音程だけでなく音質までもを維持するのです。

調律とは少し離れますが、調律師とは音を合わせるだけでなく、ピアノの音に関するすべてのことを管理をする人のことです。したがって調律師がピアノの調律するときは、音だけでなくピアノのタッチやペダルの動きなどあらゆる点からピアノを検査しています。多数の部品から構成されるアクションには摩擦する部分が多く、摩擦面にはフェルトは皮革などが雑音防止のために接着されていますが、これらの状態を鍵盤の動きや音から判断し、必要に応じて修理したり調整したりします。摩擦面だけでなく、鍵盤の動きを正確に伝えるためにアクションの調整も怠らず、ピアノを最高の状態まで引き上げ、それを少しでも長く持続させるための作業といえるでしょう。

ピアノの調律がもたらすもうひとつの効果は、ピアノの演奏を楽しむための条件を揃えることにあるでしょう。

音程が正しく保持され、すべての可動部が正常であってこそ初めてピアノという楽器としての真価が発揮されます。逆に言うと、真価を発揮しないピアノは演奏しても音楽を楽しむ道具ではなくなってしまうのです。 動かない鍵盤があったり音が出ない鍵盤などがあっては、どんなに演奏者ががんばってもいい音楽は奏でられません。88ある鍵盤に1つでも不具合があっては楽器としての価値は半分以下になってしまうのです。また、すべての部品が正常に機能したとしても、音が大きくずれていてはどうでしょう?

今日の電子ピアノやシンセサイザーなどの電子キーボードの多くにはトランスポーズ(Transpose)という、いわゆるキーを上下させる昨日がついています。これを使った実験ですが、あるピアニストにお気に入りの曲を電子ピアノを演奏してもらうときにキーを半音だけあげたり下げたりすると、それだけで演奏者は自分の実力を発揮しきれなくなったり、果てには演奏を間違えてしまったりします。これは絶対音感とはいわないまでも演奏者がある程度の音感を記憶していることが原因にあります。いつもと同じ鍵盤を押さえるのにいつもとは違う音が聴こえてくるという現象に対して、無意識のうちに違和感を覚え、予想もしない展開に反応しきれなくなってしまうのです。これは成人よりも小さなお子さんに現れやすい症状で、これが続くとピアノを演奏しても面白くないとか音楽事態がいやになってしまうということにもなりかねません。長い間調律をせずにピアノを使用している場合、いつも自分の家のピアノで聴いている音と先生や学校のピアノの音が違うと反応したら一度ピアノを調べる必要があるでしょう。半音下がっていたら早いうちに調律することをおすすめします。

このようにピアノの調律とは、ピアノの機能的な面から演奏者の心理的な面まで幅広く影響する重要な作業であり、音楽を楽しむために必要な作業です。せっかく広い場所をとって置いておくのですから、いつまでも良い音を出して音楽を楽しめるようにしっかりとお手入れしましょう。


5.ピアノはなぜ88鍵?


ピアノの鍵盤は、白鍵(52)と黒鍵(36)をあわせて88になりますが、これはなぜでしょう? 初期のピアノは当時61鍵程度であったといわれます。モーツァルトが没した5年後に6オクターブ半に広げられたとのことですので、このときでやっと78鍵になっています。

ベートーベンの晩年になって、やっと7オクターブ半(88鍵)のピアノが誕生するので、現在と同じ音域のピアノを使用していたのはショパンやリスト、シューマンやそれ以降の作曲家ということになります。

しかしこれで現在のピアノが完成されたわけではなく、その後も改良に改良をかさねていきます。たとえばピアノの弦は最初すべて平行に張られていましたが、限られたスペースにより長い弦を張りたかったことや音のバランスなどを考慮することで二重交叉弦が生まれました。また、音域が広がることによって弦の本数も増え、鉄の進歩により弦は鉄線から鋼線へと移り変わりました。今度は張力が上がることによりそれなりにピアノを補強する必要が出てきました。そのために誕生したのが木枠に添える鉄骨です。鉄骨は全体で20トンにも及ぶピアノの張力を支えるために必要な部品です。このようにピアノの進化は科学技術とともに歩んできたのです。


6.良いピアノの選び方


ピアノは決して安い楽器ではありません。それだけに慎重に選ぶ必要があります。ましてやピアノのことがさっぱりわからない方にはとても難しい買い物になるでしょう。以下の表は主に中古ピアノで注意する点です。見えない部分やわかりにくい部分も徹底してお店の人に見せてもらいましょう。また、初心者で不安な方はピアノの先生や、知り合いに調律師を紹介してもらっていっしょに見るのがいいかもしれません。

●ピアノそのものをチェック
外装:目だった汚れや傷がない。金属部分にさびがない。フェルトに虫食いがない。
内部:金属部分のさび、ホコリや汚れがない。
響板:割れていないこと、後ろや中から見えるところはよくチェック。
弦:切れていないこと。新品やオーバーホール済のピアノは低音部の弦が真新しい10円玉のように光っているので要注意。
アクション:きれいに掃除してある。ハンマーに虫食いなどがない。
鍵盤:ひび割れ、欠けなどがない。鍵盤小口(手前の面)は特に変色しやすいので、張り替えてあるかを見る。
製造番号:消されていない、テープなどで隠していない。書き換えられていないかなど。
ペダル:きちんと磨いてある。それぞれが機能していること。※下記参照
発音・止音:すべての鍵盤を弱く、そして強く押し音が出るか試す。ちゃんと音が出て、また余計な雑音がしないかをチェック。またすべての鍵をスタッカートで弾いて音がピタッと止まるか試す。ただし高音部は音が止まらない構造になっているので注意。初心者の方には難しいかも知れないので、ピアノの先生や詳しい方にテストしてもらう。

※ペダルはピアノによって機能が違うことがあるので注意しましょう。下の表は代表的なペダルの役割です。

【アップライトピアノ】
右:ダンパー(サステイン)ペダル
すべての弦を開放し、鍵盤を押した後放しても音が止まらない。

中:マフラー(弱音)ペダル
弦とハンマーの間にフェルトを挟み、音量を押さえる。

左:シフトペダル
ハンマーを前面に押し、現に届くまでの距離を短くする。これにより音が多少弱くなる。

【グランドピアノ】
右:ダンパー(サステイン)ペダル
すべての弦を開放し、鍵盤を押したあと放しても音が止まらない。

中:ソステヌートペダル
ある特定の鍵をおさえたままこのペダルを踏むとその音だけ開放し、音が止まらなくなる。ペダルから足を離すともとに戻る。

左:シフトペダル
鍵盤とアクションを全体的に右へずらし、弦に当たるハンマーの面積を小さくすることで音を弱くする。

一部のアップライトピアノの真ん中のペダルは低音部のみを開放する仕組みになっているものもあります。またヤマハのUX50などのようにアップライトピアノでもグランドと同じソステヌートペダルを採用しているピアノもあります。

●値段交渉など
できるだけ安く買いたいのが消費者の心情ですので、値段交渉は避けて通れない道となるでしょう。そんなときに注意するのは以下の点です。

1.極度の値下げは買い手にとって思わぬ喜びかもしれませんが、裏を返せば「その程度の商品」でしかなく、あらかじめ高めに値段設定していた可能性もあります。ピアノの内容や製造年数などをよく確認するようにします。

2.店舗で一度見たピアノは店頭契約ですのでクーリングオフは適用されません。商品の内容を確認した上で選ぶことが必要です。内金を払った後でキャンセルなどの話をすると「法的に返金の必要はありませんから」などと堂々と言ってくるお店もありますし、10万円単位のキャンセル料を請求するところもあります。契約に踏み込む前に2度3度よくピアノをチェックします。

ピアノの初心者の方にお勧めの本もあります。ていねいにやさしく解説しているので、とてもわかりやすい本です。


7.ピアノの種類-スピネット、コンソール、アップライト


一般的にピアノの種類とはグランドピアノとアップライトピアノに大きく分けられますが、縦型のピアノを分類すると実はスピネット、コンソール、アップライトなどともう少し細かく分かれていきます。それぞれ音に違いなども出てきますので、知っておくと便利です。

【スピネット・ピアノ】



背の低いピアノを単に「スピネットピアノ」と呼びがちですが、専門的にはそうではなく、アクション(鍵盤の動きを伝え、ハンマーを弦まで運ぶ打弦機構)が鍵盤よりも下に下りているピアノがスピネットピアノとなり、鍵盤の下の板(下前板)を開くとアクションの一部が見られます。辞書でSPINETという英単語を調べると

spinet
n 1: small and compactly built upright piano(小さく作られたアップライトピアノ) 2: early model harpsichord with only one string per note(初期のハプシコード(チェンバロ)で1鍵を1弦で鳴らす。

という解釈が得られますが、主に「小型」という意味があるようです。

機構としては、小型化するために無理やりアクションを下に下ろしたため、鍵盤の動きを伝えるために回転軸が2つほど多く設定されています。また小さいため弦も短く響板(きょうばん)も小さいため、アップライトピアノよりは音の伸びが劣ります。

現在、生産されている情報はほとんどなく、見つけられたとしても30年以上前の古いものがほとんどです。

【コンソール・ピアノ】



スピネット・ピアノよりも少し大きめで高さが110cmくらいのピアノになります。コンソールピアノはアップライトピアノとほとんど変わりませんが、厳密にはアクションが鍵盤に直に載っているピアノを指します。
後述しますが、昔のアップライトピアノ(特にアメリカ製)は「スティッカー」と呼ばれる棒がアクションと鍵盤の間にあり、回転軸もひとつ多かったため、鍵盤の動きを伝えるにはベストのピアノがコンソールでした。しかし響板が小さく、弦も短いため音の伸びはアップライトピアノがやはり優れているでしょう。

コンソール・ピアノは見た目がコンパクトなため、主にインテリアを重視したデザインのものがよく見られます。現在でも各社が生産、販売しています。

【アップライト・ピアノ】


今最も多く普及しているピアノをアップライトピアノと呼びますが、一時は「グランド・アップライト・ピアノ」などと呼ばれることもありました。派手な聞こえを目的とした名称でしたので、中身は同じです。

アップライトピアノはコンソールピアノと違い、鍵盤とアクションの間に距離があります。これは響板を大きくすることにより、ハンマーが叩く弦の位置(打弦点)を上に上げる必要があったためです。設計上いろいろな試行錯誤があったかと思われますが、演奏者に負担の小さい方法として、鍵盤とアクションの間に「スティッカー」という棒が置かれました。

このスティッカーはアクションの下にぶら下がっているもので、コンソールピアノに比べて回転軸が1つ多くなり、演奏者の力を伝えるには1つのロスとなってしまいました。そこで現在はスティッカーを鍵盤側に移し、また材質を金属のワイヤーに変えることでこのロスを解消しています。

現在市場に出回っているアップライトピアノの高さは120~130cmで、この高さの差でも演奏者に与える音の印象は大きく変わります。このようにピアノの高さは機構上の違いを生み、それがときに障害となりピアノ製作者を悩ませてきたのです。


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